2008年8月28日(木)
ポール・クルーグマン『格差はつくられた』読了。

クルーグマンだから考えるまでもなく購入したところ、いつもにまして政治色が
強い本で戸惑う。いきなり、「すべての根源は、アメリカの人種差別問題にある
ということである。」(p18)なんて刺激的な文章もあるし。でも、いつもどおり
主張は明快で、アメリカの現状について詳しくない俺でも興味深く読めた。
彼の主要な主張は次のようなものになるだろう。
●現在のアメリカはこれまでにない大格差時代。この原因は、技術や
グローバリゼーションではなく、政治状況や制度・規範によるもので、
これは「保守派ムーブメント」が作 り上げた政治環境に起因。
●最も裕福な人達が政党を買収できるほど裕福になったことが、保守派
ムーブメントの台頭の根本的な原因であり、彼らによってさらに経済
格差が拡大することになった。
●保守派ムーブメントが選挙で強さを維持できた最も重要な要因は人種問題。
すなわち、黒人に対する白人の恐怖を言外であろうと煽ることで、白人層を
獲得してきた。このムーブメントはアメリカ独自のもので、奴隷制度の
遺産である人種間の緊張が最大の要因。ただし、白人人口が減少している
ことと、白人が人種差別的でなくなってきているため、その勢いは失速している。
●過去30年にわたるアメリカ経済の成長の大部分は、一握りの裕福な人々を
豊かにしたが、典型的な家庭が技術進歩や生産性向上の恩恵にあずかったか
どうかは定かではない。これ自体、収入のより平等な分配を求めるのに
相応しい理由だろう。
●不平等と格差、そして不安を緩和するものに最も必要な改革は、医療保険制度
改革。これこそ新しいニューディールの中心に据えられなければならない。
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2008年8月4日(月)
アラン・ブラインダー『中央銀行の「静かなる革命」』読了。

現代の中央銀行において起きている変化のうち、注目に値する3つの側面、
すなわち、中央銀行の透明性、中央銀行の運営方法(個人か委員会か)、リード
するのは市場か、中央銀行か、について、解説されている。特に、中央銀行の
運営方法に関する分析は、個人的には初めて見るものであり、なかなか興味深かった。
ただ、ブラインダーはインフレ・ターゲッティングについては懐疑的だ。
しかし、俺にはその理由がいま一つ納得できない。ブラインダーは次のように
述べている。
しかしながら、透明性が拡充されることは、それだけでインフレ目標を導入
すべき十分な理由になると考えてよいだろうか。私は透明性および外部との
意思疎通が重要であると考えるが、だからといって、それだけの理由で
インフレ目標を採用すべきであるとは考えていない。私は、少なくとも米国に
おいては、インフレ目標への転換は、連邦準備制度理事会のもう1つの目標で
ある雇用維持(あるいは生産の安定)を自動的に軽視することになるのでは
ないかと危惧している。インフレ目標導入は連邦準備法の書き換えに等しく、
書き換えられた米国連邦準備法の下では雇用の維持の重要性が低下すると
解釈せざるを得ない。(p72)
つまり、インフレ目標導入は透明性の拡充という観点からは望ましいが、雇用の
維持の重要性が低下すると考えられるので、その採用には慎重になった方がいい、
ということのようだ。しかし、別の箇所では、次のようにも述べている。
前述の議論では、インフレ目標のみを有する中央銀行と、連邦
準備制度理事会のように複数の目標を有する中央銀行とを私は
区別してきたが、両者の違いは実際上それほど大きいわけでは
ないことも確かである。大勢のインフレ目標論者が指摘して
きているように、インフレ目標を徐々に実現しようとしている
中央銀行は(どれくらいの時間をかけるかが数字をもって公表
されていない限り)、曖昧とはいえ、雇用の安定化という目標を
同時に有していることと、実は等しいのである。(p49〜p50)
インフレ目標論者、そしてブラインダー自身も認めているように、
インフレ目標を掲げる中央銀行は、雇用の安定化という目標も同時に
有している。インフレ目標導入によって雇用の維持の重要性が
低下するかどうかは、中央銀行の目的関数の中の雇用の安定に
関するウェイト如何だろう。
また、次のような記述もある。
インフレ目標導入論者は、私の反対論に対して、いくつかの
論拠から反駁する。彼らは、私が「柔軟な」インフレ目標と
連邦準備制度理事会の二元的な使命との違いを誇張していると
主張する。彼らの主張では、柔軟なインフレ目標の下での
中央銀行は、雇用維持に関する短期的な懸念を全く有しない
わけではないからである。
(中略)
このようなインフレ目標導入論者の議論は全て正しい。しかし、
政策が機能する現実の世界においては、数字が重要な意味を
持つ。もし連邦準備制度理事会の使命がインフレ率を一%
または二%に引き下げることのみであったならば、連邦準備
制度理事会は一九九〇年代にあれほどの高い経済成長を許容
したかどうか、私には大いに疑問である。
うーん、なんだか反論になっていないような・・・。
インフレ目標導入論者はインフレ率を引き下げることのみに
関心があるわけではないとブラインダー自身も認めてるんじゃ
なかったっけ?
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2008年7月16日(水)
ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』読了。

恥ずかしながら、あまり経済学の古典と呼ばれる本はほとんど読んだことが
ないんだけど、高橋洋一氏の解説(と、そこに書いてあった「マンキュー教授は、
テキスト以外で推薦する一冊といえば、本書であるという」という文章)を読んで
買ってみた。
高橋氏も書いているように、「一九六二年に出版された本であることを忘れしまい
(原文ママ)、今の経済問題を論じているかのように錯覚」に俺も確かに陥った。
ただしミクロ的な政策に関しては。マクロ政策は、さすがに今見ると古いかな、
という主張が見られる(その代表は、有名なkパーセントルール)。でも、
インフレ・ターゲッティングに関する言及があったのには素直に驚いた。
教育への政府の介入、職業免許制度、社会福祉政策等の、ミクロ的な政策に関する
フリードマンの主張は、自由主義者という立場からばっさばっさと論理で切り
込んでいくので鮮やかだ。数式は一切ないし、あまりデータも出てこないけど、
論理だけで何かを主張しようとするには、その文言の裏にある研究やデータ分析
等の蓄積が相当なければできないはず(そうでなければ、主張はまともに取り
上げてもらえないし、生き残らない)。本書の簡潔で明快な書きぶりは、
そのようなものに裏打ちされたフリードマンの自信のようなものも感じさせる。
高橋氏もそうだったように、俺も本書を仕事上の元ネタとして
使わせてさせてもらおう。
最後にお約束だけど、政府が行うべきではない政策のリスト。
まだまだ多く残ってますな・・・
●農産物の買取保証価格制度
●輸入関税・輸出制限
●農産物の作付面積制限や原油の生産割当てなどの産出規制
●家賃統制
●最低賃金・法定金利
●産業規制・銀行規制
●ラジオ・テレビ規制
●社会保障制度、とくに老齢・退職年金制度
●特定事業・職業の免許制度
●住宅政策
●徴兵制
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